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み
どり:「お父さん、危ない目に遭ってきちゃった。歩道を歩いていたら、後ろから来た自転車にぶつかりそうになったの。」
父:「そりゃ、危なかったね。その歩道は、自転車が通っていい歩道なのかな?」
みどり:「自転車も通れる歩道なんだ
けど、だからといって、歩行者を危険な目に遭わせていいわけないよね。その人、謝るどころか、『気をつけろ!』と叫んで行っちゃったよ。」
父:「原則自転車は車道を通らなければならないのだけれども、自動車の多い一部の道路では自転車が歩道を通ることが許されているところがある(注:道路交
通法第63条の4)が、そういうところでも自転車は歩行者の安全を考えて通らなければいけないはずだ。自分に通る権利があるからといって、歩行者を危険な
目に遭わせていいわけがないからね。権利は『公共の福祉』(注:憲法12条条文)のために使わなければならないからね。」
みどり:「『公共の福祉』って何?」
父:「憲法では、国民の基本的人権が保障されているけれども、無制限に権利を行使できるわけではなくて、他人の権利を侵害しない範囲で行使できるんだ。他
人の権利を侵害しないこと、これを『公共の福祉』って言うんだ。簡単に言えば、他人に迷惑をかけない、ということかな。」
みどり:「他人の権利を侵害する場合
は人権を制限できるの?例えば、『消費税率アップ反対』を叫ぶデモ行進を混雑する道路で行おうとした場合に、それを禁止したりできるの?」
父:「朝、夕方のラッシュアワーにデモ行進をしたら、交通渋滞の原因になって、多くの人が迷惑を受けるから規制されることになると思うが、日中の混んでい
ない時間帯なら、あまり迷惑にならないから、ラッシュアワー以外の時間帯でデモ行進するという申請をすれば、許可せざるを得ないよね。政府の政策に反対す
るデモだから、という理由でデモを禁止したら、それは表現の自由の侵害になる。」
みどり:「少しでも通行者の迷惑にな
れば禁止できるというわけじゃないの?」
父:「重要な国政上の問題に意見を表明するのは、民主主義の基礎である表現の自由として厚く保護されているから、少しぐらい交通に支障があっても、デモを
禁止するのは表現の自由の侵害になるだろうね。自分の小さな利益を追求するために他人の大事な権利を侵害するのは、『権利の濫用』といって、それも『公共
の福祉』の中に含まれる考え方だけれど、許されないことなんだ。でも、自分の重要な権利を行使して、他人に少々不利益を与えたとしても、行使した権利が侵
害された権利に比べて保護にあたいする場合は、『公共の福祉』に反しないものとして、禁止できないと考えられている。
みどり:「『公共の福祉』による制約
として、『国の政策に反する』という理由で人権を制約することもできるの?
父:「『国の政策に反する』ことと一般的に言われても、範囲が広すぎて答えにくいけれども、国の政策に反することをして、国民一般に不利益が生ずるような
ことならば、『公共の福祉』に反するという理由で規制できると思うが、国の政策に反対するという意見表明であれば、むしろ国政に関する議論を活発にするこ
とだから、表現の自由として保護されるだろうね。基本的人権というのは大事な権利だから、それを制約するのは慎重に考えられているんだ。
マ
キコ:「英会話教室の先生が、初めはアメリカ人だったのに、最近、英語を母国語としない外国人に代わって、その先生の発音が変だから、もうやめるって事務
へ届けたら、半年分納めた授業料が何も返って来ないって言われた!」
母:「まだ3ヶ月くらいしか行ってないんじゃない?」
マキコ:「そうよ。まだ半分しか
授業を受けていないから、半分戻ってくると思っていたんだけど、最初に納めた6ヶ月分の授業料は、単価が安いので、3ヶ月
でやめる場合は、3ヶ月の授業料の単価が適用されて、3ヶ月の単価は6ヶ月の単価の倍だから、3ヶ月でも6ヶ月でも、授業料は同じなんだって。ひどい
話。」
母:「鉄道の定期券を買った場合でも、6ヶ月定期を3ヶ月使った後払い戻すと、あまり戻ってこないわね。6ヶ月の方が割引率が高いからなのと同じことかし
ら。」
マキコ:「でも、電車は利用者の
都合でやめることが多くて、サービスが悪いから途中でやめる、ということはあまりないけれども、英会話教室の場合は、サー
ビスが悪くなったからやめたいのに、払い戻しがないというのは、理不尽(りふじん)じゃない?」
母:「それもそうねえ。それじゃ、この前登記をしてもらった司法書士さんが、そういう仕事もしているらしいから、相談してみたらどうかしら?」
マキコ:「司法書士も登記だけ
じゃなくて、そういう仕事もしているの?じゃ、行ってみる。」
マ
キコ:「というわけなんですけど、いくらか戻ってきますか?」
司法書士:「そうですね。エステや英会話教室のように長期間にわたってサービスの提供を受けるものについては、病気や転勤など利用者側の都合で継続できな
くなったり、業者のサービスが悪いからやめたいといった場合があるので、消費者に途中解約権があると特定商取引法で規定されているんです。途中解約の違約
金の上限が定められているので、いくらか戻ってきますよ。まず、内容証明郵便(注:手紙の内容を郵便局が証明してくれる種類の郵便。配達証明も付ける必要
がある。)で解約の意思表示をしましょう。」
マキコ:「契約書によると、何も
戻ってこないように思えるんですけど、本当に戻ってきますか?」
司法書士:「普通は、『契約は守られなければならない』というのが法律、特に民法の建前です。それは、お互いに対等な当事者間の合意(約束)は、契約内容
をよく理解して、自分が損しないということを確かめた上で契約するものだから、有効だし、そのような合意は法律で保護されるべきものと考えられているから
です。ところが、業者と一般消費者との間の契約については、業者は自分が提供する製品やサービスについてはよく知っていますが、消費者は知りませんし、業
者は自分に都合のよいように作った契約書で、しかも読みにくいように細かい文字で印刷されたものを渡して、署名捺印させるものですから、普通、消費者はよ
く読むのが面倒なので、読まずに契約してしまうことが多いのです。」
マキコ:「そうですね。契約書な
ど、よく読んで契約したことはありませんね。」
司法書士:「業者は法律知識も十分持っていますから、普通の消費者は太刀打ちできませんね。業者と消費者は、もともと対等ではないのです。そこで民法の
『契約当事者は対等である。』という前提に基づいて裁いてしまうと、常に消費者が負けることになり、消費者が損をすることになるわけです。」
マキコ:「それじゃ、不公平です
ね。業者はますます儲(もう)かり、消費者は食い物にされてしまいますね。」
司法書士:「そこで、国が民間人の間の契約関係に介入して、法律知識のない消費者を守ってあげようとしているのが、数々の消費者保護立法なのです。特定商
取引法もその一つです。」
マキコ:「業者の『営業の自由』
の侵害になりませんか?」
司法書士:「憲法上、業者には『営業の自由』が保障されていると考えられていますが、私有財産権(注:憲法第29条)、職業選択の自由及び営業の自由
(注:憲法第22条)などの経済的自由権は、精神的自由権(注:思想・良心の自由、表現の自由等)などの他の人権に比べて、より強い制約を受ける、と考え
られています。この社会は、形式的には平等だけれども、金持ちとそうでない人との格差が大きく開いているので、金持ちはその財産を使ってますます金持ちに
なれるので、ますます格差が開いてしまいます。そこで、財産を多く持つ人の権利を制限して、財産を持たない人の力を強めてあげるという、社会福祉国家理念
に基づいて、経済的自由権にはより大きな制約を課すことができると考えられています。これも、『公共の福祉』なんです。労働者の権利なども、この考え方か
ら保障されているんです。」
マキコ:「格差を是正して、実質
的平等に近づけていこうとしているのですね。そのおかげで私たち消費者が守られるのですね。これも憲法のおかげなんです
ね。」
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