いままで見てきた登記所を統廃合する理由とその検証の結果、今回の統廃合政策は法務省が生き残るために、登記のデータベース化への道としての登記簿のコンピュータ化費用軽減のためであることが理解できたと思います。
さて、登記所が統廃合された場合、地域住民にはどのような影響があるのでしょうか。広島県因島市は島です。統合先の尾道までは橋を通行しなくてはなりません。通行料は往復2.900円にもなります。フェリーを使うところもありますが4時間間隔です。
また、自動車を持っていない人々はバスで行くことになりますが、登記所前まで直通で行くバスはありません。尾道駅でバスに乗り換えるなどでバスに乗っている時間は1時間程度、運転間隔は各20ないし30分、10時30分の次は2時間待ちになるコースもあります。しかもバス代は往復2.180円もかかります。統廃合前はこれらの費用はかかりませんでした。
法務省は統廃合にあたって住民への行政サービスが低下しないように努力すると言いました。その具体的な策として、尾道支局内に因島住民用の駐車場を確保すること、謄抄本の係りは因島担当として1人置くこと、郵便局で謄抄本の申請をFAXでできるようにすることなどが出されました。これらのことはいずれもコストがかかることはもちろんです。
しかも、この郵便局のFAXがくせ者なのです。もちろん公図などの図面類その他は対象ではありません。会社の印鑑証明書もFAXで申請はできません。謄抄本を依頼する場合申請書をまず送信します。すると登記所でその簿冊を探し、見つかると費用をFAXで知らせてきます。すると今度は申請書に登記印紙を貼ってまた送信します。
謄抄本は後日郵便で送られてきます。この間どれくらい時間がかかるのでしょうか。FAXに馴れていない人は送るだけで大変でしょう。馴れている人でも閲覧の時に、登記簿が出てくるぐらいの時間を待つことになります。登記所ならいざ知らず、郵便局でそれを待つわけです。
登記所が忙しい場合、職員はいちいちFAXのほうを注意して見ているわけではありませんから、申請書が送られてきていることに気がつかないこともあったそうです。国会では議員がこの方法に謝意を述べていましたが、その国会議員はファックスで謄抄本が取れると思ったとしか考えられません。
法務省は一般の住民が一生に何回登記所を利用するのかといいます。一般の人が戸籍謄本や住民票と比べて、登記謄本の取得が極端に少ないと言えるでしょうか。会社の印鑑証明書や登記簿謄本の取得はどうでしょうか。住民票の写しはいまでは窓口も増え、駅前でも取得できるようになっています。あの民間会社のNTTでさえ、採算が合わないにもかかわらず、公衆電話の撤去に反対する声に配慮してしているというのにです。
登記簿を遠くに持っていって、自分の不動産の権利がどうなっているか簡単に知ることができなくて、なぜ国民の権利を守ることになるのでしょうか。コンピュータ化されれば閲覧だけはできるようになるそうですが、そのようにしてから統廃合の話をすべきではないでしょうか。
川村 前回は、法務局と登記所の違いはなにかという宿題が出でいたんですが。法務局というのが正式名称で、登記所という役所はないですよね。
東郷 そうですね。登記所という名称は登記法上の規定で、登記をつかさどる役所を登記所といっているんですね。で、法務局及びその下部機関が管轄登記所として登記をつかさどる、としているわけです。でも、法務局の役割というのは、
登記を行うだけでなく、外にもいろいろな役割をもっていますよね。
川村 供託や戸籍、それからこれから益々重要になってくると思われる人権の問題とか…。
東郷 そうすると、法務局は登記所を含んだより広い概念ということもできますよね。「法律上の争訟性」と「法律上の利益」の関係もそれと同じようなことがいえて、まったく別個の概念というわけではなく、かなりの部分重なり合った概念ということができるわけです。
川村 なーるほど、なんとなく分かりますが、もっと具体的に説明してくれませんか。
東郷 「法律上の利益」については一回目の一口メモでもいいましたが、行政事件訴訟法9条で原告に求められている訴訟要件「原告適格」の問題ですね。一方「法律上の争訟」というのは、裁判所法という法律の中で、その3条に、「裁判所の権限」として「裁判所は、日本国憲法に特別の定のある場合を除いて一切の法律上の争訟を裁判し…」とあり、裁判の及ぶ対象か否か、裁判所の権限が及ぶかどうかという問題なんです。
川村 なるほど。そうするといったん提起された裁判を、裁判所の窓から見たら、「法律上の争訟」が見えて、原告の窓からみたら「法律上の利益」が見える、というわけですね。東郷うーん、まあいいでしょう。これからパソ通で彼女とデートです。ああ、忙しい、忙しい。三重の全国研修会の準備もあるし。
