さて、今回は登記所を統廃合せざる得ない本当の理由と言われているコンピュータ化のための費用について検証してみましょう。
コンピュータ化に要する費用は、実に膨大なもので登記特別会計が導入された昭和61年度予算から現在の平成10年度予算までの登記情報システム実施経費の総合計は、3700億円を優に超え3800億円に迫る勢いです。本年度予算までで、コンピュータ化された庁またはされる予定の庁の累積数はバックアップセンターも含めて290庁に過ぎません。
単純に計算しても1庁約13億円にもなります。平成10年度予算では登記情報システム実施経費が662億円計上されており、その内コンピュータのリース料が250億円を占めております。
移行作業中の69庁を除けば、現在のコンピュータ稼動庁は219庁ですから、1庁あたりのリース料だけでも1庁1年で1億円を超える膨大な費用になっているのです。
これだけの経費をかけていく作業にもかかわらず、その将来像は曖昧模糊として明確に描かれていません。つまり400ないし500庁にすることこそが目的でありそれ以上のものは実は何もないのです。
例えば,登記情報提供システムは、登記情報をパソコンで閲覧できる制度として提示されていますが、この対象となっているのは、大量に情報を利用できる金融機関や不動産業者を想定しているのであり、一般の利用者にとっては余分な費用を払ってまで取得するだけのメリットはありません。
また、登記情報交換システムにあっても登記所に出向いて初めて管轄外の登記事項証明が得られるのであって、登記所が近傍にない利用者にとってはあまり意味を持ちません。ましてや、統廃合され登記所のなくなった廃庁地においては意味のないシステムなのです。
このシステムも都会の利用者すなわち金融機関や不動産業者だと思われますが、彼らが必要とする遠隔地の登記事項証明を取得する利便を提供するだけなのです。
ところで、国土庁の平成5年の調査に依れば、全国で法人が取得している全ての土地のうち、東京に本社のある法人はその32.1パーセントを占めており、大阪に本社のある法人まで入れると39.2パーセントにも及びます。しかし法人と個人が所有する土地面積の総合計の中での法人の所有割合は19パーセントにしか過ぎません。
つまり、法務省が提唱しているシステムは、大量の導入経費を費消し、かつその負担を受益者負担の名の元に一般の有料取得者に背負わせて、その恩恵の多くを、登記情報を元手に更なる企業活動に利用する、一部の金融機関や不動産業者に与える為のシステムといっても過言ではないのです。
この事により企業の大量利用を促し,高額の利用収益を目論見、潤沢な登記特別会計を夢見ているのです。そればかりか、それ以上にこのシステムを利用しようとしているのは、当然予算処置をしてその手数料を支払うべきであるにも関らず、膨大な量を無料で利用している官公庁に他なりません。このつけはすべて1通1000円という高額な手数料負担として一般利用者にかかってくるのです。
法務省はコンピュータ化の完了後は登記手数料が値下できるかもしれないとしていますが、これとても新登記手数料(甲号手数料)の導入なしには実現できそうにもありません。
みなさんも、もう一度コンピュータ化のことを考えてみてください。そして登記所はなくなり、手間がかかり、なんの恩恵も受けないのに登記手数料が上がる統廃合対象地域の住民のことを考えてみてください。
川村 今回は後藤訴訟の大きな論点と言われる法律上の争訟性についてなんですが。
東郷 そう先を急がないで。今回も前回に引き続き、法律上の利益について実際の裁
判例をもとに考えてみます。
たとえば子供が通っている公立小学校が移動した場合のことを考えてみてください。そのことによって交通事情が悪くなり危険が増すとか、教育上の良好な条件がなくなるなど具体的不利益が生じますね。
この場合、裁判所は生徒の保護者には法律上の利益を認めますが、単なる地域住民ではだめなんですねえ。
川村 なーるほど、今日のはなんとなくわかりますが、登記所の統廃合については地域住民が子供みたいなもので、登記所がなくなると登記義務を果たしたり、自分の権利を守るのに良好な条件がなくなり具体的不利益が生じると思うのでず
か。
東郷 学校の場合は義務教育ですから、子供を学校にやらないとその保護者は罰則を受けます。でも、単に地域の住民というだけでは、学校との法律的な関係がないというわけです。
川村 今回の判決が「会社等を設立し、その登記を経た代表取締役等については別異に解する余地がある。」といっているのはそういう事なんですね。
東郷 そうです。登記義務とか罰則規定があって、少なくとも法人にとっては登記所統廃合には法律的不利益の問題が生じる可能性を、今度の判決では示しているわけです。それから法律上の争訟性については一言では難しいのですが、法務局と登記所の違いについて考えておいてください。
