11月21日早朝、記者は全国初の大規模な形で実施される登記所統廃合影響アンケート調査の成功を、多数の国宝級宝物を擁する大三島の大山祇神社に祈願し、その後フーテンの寅を気取りながら因島土生港に降り立った。
本部となっているナティーク城山は、大河ドラマで有名となった村上水軍の城跡に建てられたホテルで、因島登記所統廃合反対運動の際も、多くの司法書士が夜遅くまで語り合った思い出の地である。今回はここに延べ30名以上の青年会員が、地域住民から直接統廃合の影響を聞き取るために集合しようというのである。調査対象となるのは事業所を中心に300か所で、浜田市のときと同じく事前にお願いの文書も郵送している。
初日は水谷副会長をはじめ島根会員を中心に、10名前後の会員が雨の中を歩き廻った。午後になると竹村副会長や稲村会長も合流し、さっそく調査に出掛けたところ商店街では各家でお茶やジュースの持てなしを受けたそうだ。また、本部では新聞社の取材も相次いだとのこと。
夜には、地元調査士も含めてワインにディナーという統廃合対策委員会のイメージを一新するような懇親会が行われた。翌日は地元広島会員も多数参加、九州からは豊後高田市の川村氏が和田副会長とともに馳せ参じた。その後担当地区が決められ、任期があとわずかな稲村会長には、命も危ぶまれるという交通量の多い、しかも気の荒い人が多いという工業団地が、また、記者には観光地水軍城のある地区が割り当てられた。こんぴ委員会の理数系理論家大森会員が一日で30軒以上回ったのを最高に各会員ともかなり精力的に回ったようだ。
調査の終わった後の充実した気持ちで眺めた水軍スカイラインや因島公園からの、夕日に浮かぶ瀬戸内海の島々のなんとすばらしい風景か。また、満潮時には渡れない、子宝祈願の地蔵鼻に、決死の上陸を敢行した大崎さんの雄姿も印象的だった。
記者も2日間で30軒弱を回ったが、因島の登記所が統廃合されたということを知らない住民はいなかった。しかし、住民全員、いや住民説明会に参加した人が統廃合反対者というわけでもないこともわかった。ただ、その人々でさえ、突然統廃合になったことや、統廃合後の地元への手当てについての説明がないことが不満だと述べていた。
特に、統廃合後の人員削減や経費節減がどの程度になったかなどの情報開示がないとの不満もあり、そのことについては反対運動を行った人々がその後も情報開示を要求しているのかとの質問もあった。国会では評判がよかった郵便局でのFAXによる謄本申込みについては、ほとんど使用されておらず、使用した人も使い方が面倒で今では使用していないということのようだ。
登記手数料の値上げについては、大半の人が反対であったが、中にはコンピュータ化のためということが理由なら、完成後は値下げの可能性があるのかとの質問があった。記者がもっとも気になったのは、浜田市での調査のときにも感じたことであるが、都会に比べると地域住民との関係が密接と思われていた地方でも、我々が思っている司法書士という仕事が、実はそれほど知られてはいないのではという疑問だ。
質問事項にはなかったが、法律面での相談ごとについて、司法書士を思い浮かべる人は、記者が調査した中ではいなかった。司法書士は登記簿謄本を取り、登記を申請する仕事であるという認識で終わってしまっているのではないだろうか。しかも謄本取得については、司法書士に依頼しなくてもよいのではないかとの意見も多く、他の調査員によれば、現に登記所に行く人同士で分担しているという話もある。自分で行うには時間がないという理由が司法書士に仕事を依頼する第一の理由であることから、登記の申請が簡単になり規制が緩和されれば、地方においても司法書士は忘れられてしまうのではないだろうか。
この点につき地元司法書士も最近は銀行を介することから、依頼人に直接会う機会が減っているということで、同じような思いを抱いているようだ。全国津々浦々に存在し、街の法律家として地域に溶け込んでいるといっても、登記所の統廃合と仕事供給元が金融機関に偏る中でそういったことは幻想となって行くのではないだろうか。今回の調査で明確となったのは、銀行等に提出するための証明書としての謄本や印鑑証明書が身近な所で簡単に早く、しかも安く取得したいというのが、事業所個人を問わず地域の人々の希望するところであることは、間違いないようだ。市という規模でありながら不便な島であるの
に、なぜ統合するのか。
他のものがどんどん安くなっている中で、なぜ公共料金だけが上がっていくのか。統廃合をするに当たって約束したことが、なぜ、特に駐車場の確保などが実行されていないのか。とにかく不便にはなったが、行政サービスはちっともよくならない、ということらしい。
